福岡高等裁判所 昭和48年(ネ)34号 判決 1975年3月26日
控訴人
山城種苗株式会社
右代表者
山城登市
右訴訟代理人
山口親男
被控訴人
株式会社養本社
右代表者
土屋卯平
右訴訟代理人
東浦菊夫
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人は控訴人に対して七五万円及びこれに対する昭和四三年九月一一日から完済まで年六分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審を通じ被控訴人の負担とする。」との判決を、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。
<以下略>
理由
一当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がないものとして棄却すべきものと判断するが、その理由は、被控訴人の本件レンゲ種子売買契約に基く目的物引渡義務の不履行がその責に帰すべからざる事由に基くものであるとの判断(原判決六枚目裏一一行目から七枚目裏四行目まで)をつぎのとおりあらためる外は、原判決理由説示と同一であるから、ここにこれを引用する。
二<証拠>を総合すると、韓国産レンゲの種子の輸入にあたつては植物防疫検査を受けなければならず、それは原則として抽出検査の方法によるので、被控訴人としては右手段が支障なく進めば八月二八日ごろまでには種子を控訴人宛発送できるものと考えていたけれども、八月二六日不合格と判定され、今度は全量につき検査を受けなければならなくなり、そのため菌核病菌を保有して後に焼却された少量の種子を除いた種子を引渡されたのが九月二日及び四日であつたので、八月二八日に発送することができなかつたこと、当初被控訴人が防疫検査に不合格になることを予測できなかつたのは、一般に種物の輸入の場合は輸出国で行われる防疫検査に合格したもののみが輸入されること、これまでの被控訴人の永い経験の中でも防疫検査で問題になつた例はなかつたこと、本件レンゲ種子についても、被控訴人は、韓国政府発行の検査合格証明書及び輸出業者発行の防疫検査より厳しい検査を経たものであることの証明書を予め入手していたためであつたこと等の事実が認められる。
以上のような事情の下にあつたものであるから、被控訴人において本件種子が防疫検査に不合格になることを予測できなかつたからといつてこれを過失と見ることはできず、結局本件不履行は被控訴人の責に帰することのできない事由によるものといわざるを得ない。
三されば原判決は正当であり、本件控訴は理由がないことに帰するのでこれを棄却することとし、訴訟費用につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(佐藤秀 諸江田鶴雄 森林稔)